幸せな人
眼鏡が中学時代の過去を御堂さんに語っております。
甘甘というより、すこし薄暗くなってしまいました(汗)
宜しければ続きよりご覧下さい。
「君はどんな子供だったんだ?」
突拍子もなく、御堂は恋人の佐伯に聞いてみた。
「何でいきなりそんな質問するんですか?」
「何となく。ただ思いついたから聞いてみただけだ」
本当に他意など無かった。
普段は眼鏡をかけて隙がない印象の佐伯だが、眼鏡を外して、ベットで横たわっている彼は年齢より遙かに幼く見える時がある。
だからそんな表情を眺めていたら、幼少の頃の彼がどんな子供だったのか知りたくなったのだ。
ただそれだけ。
べつに過去を深く知りたくて根掘り葉掘り聞きたい訳ではない。
だから御堂は言葉を付け加えてた。
「言いたくなければかまわない」
御堂はそう言いながら、人差し指で佐伯の頬やうなじをなぞって、その滑らかな肌の感触を楽しんでいた。
佐伯は御堂に少しだけ顰めた視線を向けたが、指を振り払う事はせずに、自由にさせていた。
指が顎にきたとき、佐伯はようやく口を開いた。
「何でも出来ましたよ。勉強もスポーツも学年で俺より勝る奴はいなかった。中学まではね」
当然のように出てきた彼らしい回答に御堂は苦笑する。しかしその言葉の末尾に付け加わった「中学まで」という台詞に引っかかりを覚えた。
その理由を佐伯は続ける。
「俺、中学の頃に酷いイジメにあってたんですよ」
予想外の過去に御堂の指は止まった。
「結構酷かったんですよ。靴を隠されるなんて当たり前でしたし、いきなり2階からバケツに入った汚水をぶっかけられる事もありました」
「それは・・・・・・本当か?」
「ええ」
辛い過去をさらりと語る佐伯の言葉が信じられず、思わず聞いてしまった。
「寄って集ってクラスの全員で攻撃してくるし、完全に四面楚歌状態です。でもそんな集団の中で、たった1人だけ俺を助けてくれる『親友』がいました」
「本多か?」
「違います。あいつは大学からの付き合いです。そうですね、その親友も成績も優秀でスポーツも万能でした。ただ、全てにおいて、俺より若干劣っていたのは確かです」
「君は唯一味方だった親友君とやらを見下した言い方をするな」
「誤解しないでください。当時の俺は奴を見下してるつもりもなければ、自分を凄いとも思って無かった。ただ卒業の時に奴から言われたんですよ」
「なんて言われた?」
「そんな俺の事ずっと嫌いだったそうです。だから周りを脅して虐めてやったと」
「・・・・・・・・・・・・」
御堂は言葉が出なくなった。
聞いてしまった事を後悔している。そんな表情だったが、佐伯は話を続けた。
「本当です。俺は誰の事も見下してるつもりもなかった。でもそいつからしてみれば、そんな俺が更に感に障ったみたいです」
口元だけ笑みを作る佐伯に、御堂は苦しい顔をしながら言った。
「でもそれはそいつの僻みだろう?」
「そう思います。ただ、当時の俺はそうは考えなかった。目の前にある辛さから逃げる為に、もうこんな目にあうぐらいなら、こんな目にあう自分の能力なんか捨ててしまいたいと思ってしまったんですよ。そして高校から社会人3年目を迎えるまで、周囲から妬まれる心配もないぐらいに駄目なやつでした」
「でも、私と初対面の時の君は違っていたぞ?自信に満ち溢れた、やや生意気な男だった」
「俺に遠慮は無用です。『生意気だった』で結構ですよ」
「そうか、では生意気だった。最初おどおどしてると思ったら、急に態度が豹変して強引な上に礼儀もない。それなのに、反論出来ない自分が更に腹立たしかった」
居直る御堂に佐伯は笑う。
ようやく本当の笑みを見せた佐伯に御堂も笑い、佐伯の上に覆いかぶさると、そのまま何度も口付ける。
「逆に聞きますが、御堂さんの子供の頃はどうだったんですか?」
佐伯の質問に御堂は少し考えて答える。
「今と大差ない。ただ昔は喘息持ちで小学校まで身体は弱かった」
「でしょうね。あんたは今も昔も大差なさそうだ」
「それはいい意味で捉えて構わないのか?」
「ええ。ご自由に。どう思われようが個人の主観に口を挟む気はありませんから」
「生意気だな。可愛くない」
「褒め言葉として捉えておきます」
「勝手にしろ。個人の主観は自由だからな」
佐伯は御堂の首に両腕を回す。
御堂もそれに引きよせられるかのように、佐伯に顔を近づける。
そして鼻が触れ合う寸前の距離で止まり、言った。
「人を中傷したり、虐めたり、揚げ足を取ろうとする奴は幸せではないからだ。己に劣等感を持ち、常に満たされない思いに苛まれているからそれを補おうと、人を傷つける行為に走る。
そうやって更に不幸になっていくんだ。幸せで満ち足りた人間はそんな浅はかな行為はしない」
自分に向けられた力強い言葉と熱い視線に、佐伯は一瞬ゾクリとした。
しかし悪い笑みを浮かべて言ってやる。
「では、俺と出会った時の御堂さんは幸せではなかったんですね」
佐伯の台詞に、御堂の真剣だった表情が、少し崩れてむくれたものになる。
「君はまだ根に持っているのか?だとしたら君も人の事は言えないぐらいに私に対して酷い行為のオンパレードだったぞ?」
佐伯は一瞬目を見開いて、少し考えるが「はぁ、まぁ」と曖昧な返事をして誤魔化した。
そんな佐伯に御堂も再び笑う。
「やった事はしっかり自分に跳ね返ってくるんだ。君も私も経験済みだろう?」
「まぁそうですね……。思えば俺も幸せとは言えない毎日を送ってましたから」
「それを言うなら私も同じだ。あの頃は気づかなかったが、今の生活から比べると、どれだけ自分が乾いた生活を送っていた事がわかる。でも……」
二人は見つめ合い、言葉の続きは紡がないままに、そのまま情事に流れ込んだ。
それでいい。
言葉などいらない。
「でも」で続く言葉は2人とも同じであり、今感じている事なのだから。
『今は幸せ』
それが二人の言葉の続き。
他人の幸せを妬み、他人の才能を嫉む。
悲しいかな、それが人間の本性。
ただ『幸せ』であればそんな負の思考は生まれない。
不幸だからこそ、心が荒み他人も自分も傷つけるのだ。
長い人生を生きていれば、今ある幸せに盲目になり、不幸だけを感じて渇きを覚え、過ちを犯しそうになるだろう。
ただ、そうなった時、パートナーの危機を守るのが互いの努め。
佐伯が過ちを犯しそうになったら御堂が正し、御堂が過ちを犯しそうになったら佐伯が正せばいい。
それが愛情。
くじけそうになった時、魔法の言葉を唱えればいい。
「愛してる」
その言葉が何より2人の絆と、幸せの力を強くするのだから。
2人でいる限り、佐伯も御堂も、二度と過ちを犯す事はない。
======================================
もっと激甘ラブラブを書こうと思ってたら微妙に薄暗くなってしまいました(汗)
一応ミドメガなんですが、メガミドにも見える(反省)
へそまるがこの2人のカプを書くと受け攻め関係なく、リバっぽくなります。
受けなのに攻め。攻めなのに受けみたいな。
もうおわかりだとは思いますが、非設定のカプにつき設定をいじってます。
ノマルートなのか眼鏡ルートなのかは曖昧で過去の設定もへそまるの妄想です。
今回は親友君との過去を書きましたが、本当に澤村さんとの過去が気になります。
眼鏡がどうされちゃうのかと今からハラハラドキドキです。
FD発売が楽しみすぎる…!
ここまで読んで下さってありがとうございました!
宜しければ拍手ボタンを押して頂けたら励みになります。
コメント付きだと更に大喜びです(;v;)
甘甘というより、すこし薄暗くなってしまいました(汗)
宜しければ続きよりご覧下さい。
「君はどんな子供だったんだ?」
突拍子もなく、御堂は恋人の佐伯に聞いてみた。
「何でいきなりそんな質問するんですか?」
「何となく。ただ思いついたから聞いてみただけだ」
本当に他意など無かった。
普段は眼鏡をかけて隙がない印象の佐伯だが、眼鏡を外して、ベットで横たわっている彼は年齢より遙かに幼く見える時がある。
だからそんな表情を眺めていたら、幼少の頃の彼がどんな子供だったのか知りたくなったのだ。
ただそれだけ。
べつに過去を深く知りたくて根掘り葉掘り聞きたい訳ではない。
だから御堂は言葉を付け加えてた。
「言いたくなければかまわない」
御堂はそう言いながら、人差し指で佐伯の頬やうなじをなぞって、その滑らかな肌の感触を楽しんでいた。
佐伯は御堂に少しだけ顰めた視線を向けたが、指を振り払う事はせずに、自由にさせていた。
指が顎にきたとき、佐伯はようやく口を開いた。
「何でも出来ましたよ。勉強もスポーツも学年で俺より勝る奴はいなかった。中学まではね」
当然のように出てきた彼らしい回答に御堂は苦笑する。しかしその言葉の末尾に付け加わった「中学まで」という台詞に引っかかりを覚えた。
その理由を佐伯は続ける。
「俺、中学の頃に酷いイジメにあってたんですよ」
予想外の過去に御堂の指は止まった。
「結構酷かったんですよ。靴を隠されるなんて当たり前でしたし、いきなり2階からバケツに入った汚水をぶっかけられる事もありました」
「それは・・・・・・本当か?」
「ええ」
辛い過去をさらりと語る佐伯の言葉が信じられず、思わず聞いてしまった。
「寄って集ってクラスの全員で攻撃してくるし、完全に四面楚歌状態です。でもそんな集団の中で、たった1人だけ俺を助けてくれる『親友』がいました」
「本多か?」
「違います。あいつは大学からの付き合いです。そうですね、その親友も成績も優秀でスポーツも万能でした。ただ、全てにおいて、俺より若干劣っていたのは確かです」
「君は唯一味方だった親友君とやらを見下した言い方をするな」
「誤解しないでください。当時の俺は奴を見下してるつもりもなければ、自分を凄いとも思って無かった。ただ卒業の時に奴から言われたんですよ」
「なんて言われた?」
「そんな俺の事ずっと嫌いだったそうです。だから周りを脅して虐めてやったと」
「・・・・・・・・・・・・」
御堂は言葉が出なくなった。
聞いてしまった事を後悔している。そんな表情だったが、佐伯は話を続けた。
「本当です。俺は誰の事も見下してるつもりもなかった。でもそいつからしてみれば、そんな俺が更に感に障ったみたいです」
口元だけ笑みを作る佐伯に、御堂は苦しい顔をしながら言った。
「でもそれはそいつの僻みだろう?」
「そう思います。ただ、当時の俺はそうは考えなかった。目の前にある辛さから逃げる為に、もうこんな目にあうぐらいなら、こんな目にあう自分の能力なんか捨ててしまいたいと思ってしまったんですよ。そして高校から社会人3年目を迎えるまで、周囲から妬まれる心配もないぐらいに駄目なやつでした」
「でも、私と初対面の時の君は違っていたぞ?自信に満ち溢れた、やや生意気な男だった」
「俺に遠慮は無用です。『生意気だった』で結構ですよ」
「そうか、では生意気だった。最初おどおどしてると思ったら、急に態度が豹変して強引な上に礼儀もない。それなのに、反論出来ない自分が更に腹立たしかった」
居直る御堂に佐伯は笑う。
ようやく本当の笑みを見せた佐伯に御堂も笑い、佐伯の上に覆いかぶさると、そのまま何度も口付ける。
「逆に聞きますが、御堂さんの子供の頃はどうだったんですか?」
佐伯の質問に御堂は少し考えて答える。
「今と大差ない。ただ昔は喘息持ちで小学校まで身体は弱かった」
「でしょうね。あんたは今も昔も大差なさそうだ」
「それはいい意味で捉えて構わないのか?」
「ええ。ご自由に。どう思われようが個人の主観に口を挟む気はありませんから」
「生意気だな。可愛くない」
「褒め言葉として捉えておきます」
「勝手にしろ。個人の主観は自由だからな」
佐伯は御堂の首に両腕を回す。
御堂もそれに引きよせられるかのように、佐伯に顔を近づける。
そして鼻が触れ合う寸前の距離で止まり、言った。
「人を中傷したり、虐めたり、揚げ足を取ろうとする奴は幸せではないからだ。己に劣等感を持ち、常に満たされない思いに苛まれているからそれを補おうと、人を傷つける行為に走る。
そうやって更に不幸になっていくんだ。幸せで満ち足りた人間はそんな浅はかな行為はしない」
自分に向けられた力強い言葉と熱い視線に、佐伯は一瞬ゾクリとした。
しかし悪い笑みを浮かべて言ってやる。
「では、俺と出会った時の御堂さんは幸せではなかったんですね」
佐伯の台詞に、御堂の真剣だった表情が、少し崩れてむくれたものになる。
「君はまだ根に持っているのか?だとしたら君も人の事は言えないぐらいに私に対して酷い行為のオンパレードだったぞ?」
佐伯は一瞬目を見開いて、少し考えるが「はぁ、まぁ」と曖昧な返事をして誤魔化した。
そんな佐伯に御堂も再び笑う。
「やった事はしっかり自分に跳ね返ってくるんだ。君も私も経験済みだろう?」
「まぁそうですね……。思えば俺も幸せとは言えない毎日を送ってましたから」
「それを言うなら私も同じだ。あの頃は気づかなかったが、今の生活から比べると、どれだけ自分が乾いた生活を送っていた事がわかる。でも……」
二人は見つめ合い、言葉の続きは紡がないままに、そのまま情事に流れ込んだ。
それでいい。
言葉などいらない。
「でも」で続く言葉は2人とも同じであり、今感じている事なのだから。
『今は幸せ』
それが二人の言葉の続き。
他人の幸せを妬み、他人の才能を嫉む。
悲しいかな、それが人間の本性。
ただ『幸せ』であればそんな負の思考は生まれない。
不幸だからこそ、心が荒み他人も自分も傷つけるのだ。
長い人生を生きていれば、今ある幸せに盲目になり、不幸だけを感じて渇きを覚え、過ちを犯しそうになるだろう。
ただ、そうなった時、パートナーの危機を守るのが互いの努め。
佐伯が過ちを犯しそうになったら御堂が正し、御堂が過ちを犯しそうになったら佐伯が正せばいい。
それが愛情。
くじけそうになった時、魔法の言葉を唱えればいい。
「愛してる」
その言葉が何より2人の絆と、幸せの力を強くするのだから。
2人でいる限り、佐伯も御堂も、二度と過ちを犯す事はない。
======================================
もっと激甘ラブラブを書こうと思ってたら微妙に薄暗くなってしまいました(汗)
一応ミドメガなんですが、メガミドにも見える(反省)
へそまるがこの2人のカプを書くと受け攻め関係なく、リバっぽくなります。
受けなのに攻め。攻めなのに受けみたいな。
もうおわかりだとは思いますが、非設定のカプにつき設定をいじってます。
ノマルートなのか眼鏡ルートなのかは曖昧で過去の設定もへそまるの妄想です。
今回は親友君との過去を書きましたが、本当に澤村さんとの過去が気になります。
眼鏡がどうされちゃうのかと今からハラハラドキドキです。
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